「会計と簿記ってどう違うの?」
「経理部じゃないから関係ないよね?」
このような点について、お話していこうと思います。
本記事で私が述べたいポイントは、「会計や簿記は全ての人にとって身近で大切なものである」ということです。
なぜ大切かというと、ズバリお金に関係する話だからです。
それもあってビジネスの世界においては、英語と同様に「共通言語」と認識されています。
大切なものだからこそ多くの方に会計や簿記に対する理解を深めてほしいと考えています。
専門的な細かい話は本記事では極力触れないようにしていますので、気楽にお読み頂き少しでも興味を持って頂ければ幸いです。
この記事を書いている私は、公認会計士の資格を持ちつつ、事業会社の財務経理部門で経理マネジャーを担当しております。
本記事の内容
会計の意味
会計の日本語での意味
会計の意味を広辞苑から抜粋すると以下の通りです。
金銭・物品の出納の記録・計算・管理。また、その担当者。
企業の財政状態と経営成績を取引記録に基づいて明らかにし、その結果を報告する一連の手続。また、その技術や制度。企業会計。引用元:広辞苑より抜粋
会計の英語訳から
会計を英語で言い換えると"accounting"になります。("account"+"-ing")
"account"には会計や計算といった意味合いがあります。また、動詞として使う場合は"account for"で「説明する」という日本語訳になります。
元々計算するというニュアンスがあったところ、その対象が数字だけではなく物事全般に向けられるようになった結果、「計算結果を示す⇒説明する」という意味合いが加わったようです。
まとめると
会計には「説明する」「報告する」という意味合いが込められています。
この点はこの後の説明に関連するので頭の片隅に置いておいて頂けると良いと思います。
以下の「言葉の由来」はあくまでも余談なので、読み飛ばして頂いても問題ありません。
言葉の由来
「会計」という単語は、司馬遷が編纂した中国の歴史書である「史記」にまで遡ります。
会計は「計は会なり」という言葉が由来となっています。(補足:「会」という感じは本来旧字体で表現されています。)
それぞれの漢字の意味合いは以下の通りです。
計=言を正確にする
会=増大する
したがって「計は会なり」という言葉は、「状況を正確に伝えれば、増大することにつながる」というふうな意味合いになります。
私自身しっくり来るような来ないようなという感じですが、状況を正確に伝えることは大切だということを言いたいのだと思っています。
ーーー補足ーーー
計・・・「言」+「十」で構成されます。
言⇒明確・正確に話すこと
十⇒東西南北の四方位を意味する
狩猟から帰ってきた際、共同体の長に各方面の現場の状況を正確に伝えることが要求されていたそうです。
会(會)・・・「曾」が変化した字です。
曾⇒増えること(せいろを重ねて蒸すことを表している)
簿記の意味
簿記の日本語での意味
簿記の意味を広辞苑から抜粋すると以下の通りです。
特定の経済主体の経済活動を主として貨幣金額によって捉え、その主体が所有・管理する財産の変動を帳簿に記録・計算する技法。
記帳方法により単式と複式とに分かれ、適用領域と記録・計算内容により商業簿記・工業簿記・銀行簿記・農業簿記・官庁簿記などに分かれる。引用元:広辞苑より抜粋
簿記の英語訳から
簿記を英語で言い換えると"bookkeeping"になります。
”book(s)"には「帳簿」という意味があり、"keep"には「(日記や帳簿を)つける」という意味があります。
まとめると
簿記は「帳簿に記入・記録する」ことを意味しています。
ちなみに帳簿とは取引やお金の流れを記入するものと理解して頂ければと思います。
会計と簿記の関係性
「会計」について短い文で表現すると以下の通りです。
日々の取引や財産の変動を帳簿に記録し、それに基づいて財政状態と経営成績を明らかにし、その結果を報告する。
このうち、「日々の取引や財産の変動を帳簿に記録」することが簿記であり、「会計」というものを構成する一つの要素であると言えます。
会計と簿記は互いに切り離すことができない存在であり、会計を理解するためには簿記の理解が必要で、簿記を理解するためには会計の理解が必要になります。
会計の種類
会計を大別すると財務会計と管理会計に分けられます。
それぞれの違いのポイントは次の通りです。
財務会計
企業外部の利害関係者に向けて財政状態や経営成績をを伝達・提供することを目的とする。
準拠すべき会計基準が存在し、財務諸表や計算書類というアウトプットがある。
各種法律によって要求される事項がある。
管理会計
企業内部の経営者・管理者に向けて経営管理に役立つ情報を提供することを目的とする。
一般的な考え方はあるが、企業によって任意に決められ、レポート等のアウトプットがある。
経営管理が目的であることからも、取り入れるかどうかは任意。
簿記の種類
簿記の意味を広辞苑から抜粋した際に触れなかった後半部分について触れます。
記帳方法により単式と複式とに分かれ、適用領域と記録・計算内容により商業簿記・工業簿記・銀行簿記・農業簿記・官庁簿記などに分かれる。
引用元:広辞苑より抜粋
商業簿記・工業簿記については簿記検定の科目になっており、聞き馴染みがある方も多いかもしれません。
それぞれのイメージについて、「商業簿記は商品を仕入れて販売する業態に使う簿記」「工業簿記は製造業において使う簿記」とよく言われます。
この点について間違ってはいないと思いますが、あまり気にしなくて良いと思います。
「商業」「工業」という言葉を聞いて思い浮かぶイメージがあるのではないでしょうか。おそらくそのイメージで認識しておけば良いと思います。
ちなみに日商簿記検定の試験科目を見ると、「商業簿記・会計学」「工業簿記・原価計算」となっております。
公式サイトの出題区分表を見て頂くと、それぞれがどのような内容を対象としているかなんとなくイメージがわくかもしれません。
さらに公認会計士のことについても触れたいところですが、かなり話がそれてしまいそうなので、機会があれば別の記事で触れてみようと思います。
家計簿とのつながり
タイトルを見た時点から「簿記と会計の話なのにどうして家計簿が出てくるのか?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
なぜ家計簿の話を出したかというと、家計簿は簿記や会計と切り離すことができない存在だからです。
簿記の種類の説明において「適用領域と記録・計算内容により種類が分かれる」ことに触れましたが、家計簿は簿記の一種であると言うことができます。
家計簿
⇒帳簿
家計簿をつける
⇒簿記
家計簿の内容をまとめる(家族に共有する)
⇒会計
家計簿をつけてそれまでの収入や支出を振り返り、ある時点での貯蓄を把握しその後の予算を立ててそれに合わせて行動していくという行為は、まさに簿記や会計の考え方が深く関係しています。
企業が1年間の決算報告をすることと大きく変わりません。
企業にとっても個人にとっても財産は非常に大切です。
個人としては複雑な取引をするわけではないし、大げさに簿記や会計という話を持ち出す必要はないと思われるかもしれません。
ところが、今やクレジットカード・ポイント・決済アプリ等さまざまな取引手段があり、人によっては様々な種類の資産をお持ちかと思います。
そのような中で自分自身の家計の管理をするには、ある程度簿記や会計の知識がなければ十分な対応を取ることが難しくなってきています。
もちろん簿記の知識がない人でも簡単に家計管理ができるというサービスは世の中に出てきていますし、今後もどんどん増えていくかと思います。
私としても誰でも簡単に家計管理ができるような世の中になってほしいとは思いますが、自分で基礎知識を持っていた方がより良いサービスを見分けることやサービスをより良く使いこなすことにつながると思います。
この点に関して、家計簿アプリの活用法等について今後記事にしていきたいと思います。
最後に
会計や簿記に興味を持って頂きたく、家計簿の話を出しましたが、会計や簿記はビジネスにおいて共通言語と認識されています。就職や転職においても当然有利に働きますし、今の仕事においても様々な形で活かされます。
少しでも簿記や会計に興味を持って頂けた方には、最初の一歩として簿記検定について検討してみることをおすすめします。
関連する記事を書いていますので、そちらも参考にしてみてください。家計簿に関連する記事も今後書いていこうと思います。
最後までお付き合いありがとうございました。