「3種類ある簿記検定の違いって?」
「簿記って日商簿記以外にあるの?」
「どれを受ければ良いの?」
このような疑問に対して3種類ある簿記検定について説明していこうと思います。
この記事を書いている私は、公認会計士の資格を持ちつつ、事業会社の財務経理部門で経理マネジャーを担当しております。
本記事の内容
各簿記検定の概要について
日商簿記
正式名称
日商簿記検定試験
主催者
日本商工会議所
全経簿記
正式名称
簿記能力検定
主催者
全国経理教育協会
全商簿記
正式名称
簿記実務検定試験
主催者
全国商業高等学校協会
目次を見てお気付きかと思いますが、本記事では全商簿記について詳細に記載しておりません。
なぜなら、
本記事の読者の多くにとって、検討対象外になると想定されるため。
主催者の名前を見てお分かりかと思いますが、全商簿記の受験生はほぼ全員が商業高校の生徒の方々です。
「本当に?」と思われるかもしれないので、実際の統計データをお示しします。
全商簿記2019(令和元)年度の統計データ※2回開催分合計
受験者数 (括弧内は一般受験者)
208,119名 (435名)
合格者数 (括弧内は一般受験者)
98,062名 (219名)
出所:全国商業高等学校協会公式サイト
この通り一般受験者はわずか0.2%程度です。
加えて私自身商業高校の出身者でもなく全商簿記について語れる立場にもないことから、本記事の対象外としました。
以下からは日商簿記と全経簿記に焦点を当てて話を進めたいと思います。
日商簿記と全経簿記の比較
公的資格か民間資格か
日商簿記と全経簿記の違いのうち大きなものとして、「日商簿記は公的資格」「全経簿記は民間資格」というのが挙げられます。
ポイント
日商簿記は商工会議所法という法律の規程に基づいて実施される、商工会議所検定試験のうち簿記に関する試験。
全経簿記は公益社団法人全国経理教育協会が実施する、簿記検定試験。文部科学省後援。
級の分け方
日商簿記は「1級・2級・3級・初級」、全経簿記は「上級・1級・2級・3級・基礎簿記会計」とそれぞれ分かれています。
各級のレベルは概ね以下の通り対応しており、それぞれ同等レベルの試験を比較すると日商簿記の方が若干難度が高いと言われています。
日商1級≒全経上級
日商2級≒全経1級
日商3級≒全経2級
日商初級≒全経3級
受験者層
日商簿記は公的な資格であることからも、受験者層の幅が広いです。
一方で全経簿記については全国経理教育協会が主催しているため、簿記や経理の専門学校に通う生徒の方々が多く受験します。
参考
全国経理教育協会の会員には、大原・TACをはじめとした数百の専門学校等が名を連ねています。
いずれも税理士試験の受験資格を得られる
日商簿記1級の合格者と全経簿記上級の合格者には、税理士試験の受験資格が与えられます。
日商簿記も全経簿記も一般的に広く評価される資格であると言えます。
全経簿記は民間資格ですが後援に文部科学省がいることからもわかる通り、公的な存在に近いと言えるでしょう。
(簿記や会計の考え方が変わるわけでもないのだから、試験を統一しても良いのではと思ってしまいますが何か事情があるのでしょう。)
どちらの試験も1950年代から始まった歴史のある試験です。
それではどちらを受験すれば良いのかという点について、最後にお応えしようと思います。
迷ったら日商簿記検定を受けよう
目次を見た時点でわかってしまいますが、結論は「日商簿記検定を受けましょう」ということです。
ここまで述べてきた通り日商簿記と全経簿記で受験者層等に違いはありますが、基本的な簿記や会計の考え方が変わるわけではないですし、どちらも一般的に評価される資格であることには違いがないです。
ただ知名度を考えると、こだわりがない限り日商簿記を強くおすすめします。
日商簿記資格をもっている人でも、全経簿記がどのようなものか知らない人も実は多く、人によっては存在自体よく知らない人もいます。
知名度が異なる原因として受験者層の違いもあると思いますが、わかりやすいデータとしてそれぞれの受験者数を示したいと思います。
※2019(令和元)年度に開催された全ての試験の延べ人数(「受験者数⇒合格者数」)
日商簿記
1級
14,308名⇒1,310名
2級
137,678名⇒37,270名
3級
229,461名⇒112,887名
合計
381,447名⇒151,467名
全経簿記
上級
4,011名⇒632名
1級
4,741名⇒2,449名
2級
11,372名⇒6,220名
3級
23,396名⇒14,908名
合計
43,520名⇒24,209名
ポイント
日商簿記は全経簿記に比べて非常に多くの人が受験している。
日商簿記は就職や転職にも有利に働きやすいので、全経簿記にこだわりがなければ日商簿記を検討しましょう。
参考
税理士試験の受験資格を考えている方にとっては、比較すると難易度が低いと言われる全経簿記上級の取得を検討するのも一つの手段かと思います。とはいえ、全経上級もレベルの高い試験ですのでやることは変わらないと思っておいた方が良いと思います。
最後に
簿記資格を持つことで就職や転職が有利になることはもちろん、ビジネスパーソンとして必須の知識が身につくので是非簿記や会計の勉強を始めましょう!
これから日商簿記を始めようと考えている方に向けて、何級を目指せば良いのかということについて別記事をご参照ください。
最後までお付き合いありがとうございました。